海無し県だけに海岸線=最低所という法則は当てはまらず、最高点のように誰もが分かる明確な形とか標識、基準がありません。
で、県内最低地点を考察してみたいと思います。
最低地点を探すひとつの
キーワードは「水」。
地球の重力にしたがって、水は高いところから低いところへ流れます。
誰もが理解できる簡単な自然科学の法則ですね。
つまり、
水の集まる川を比較検討した中で最も標高の低い場所が県内最低地点という訳です。
長野県内を源流として海に注ぐ河川は、太平洋側には、
●木曽川
●矢作川
●天竜川
●釜無川(富士川)
日本海側には
●千曲川(信濃川)
●関川
●姫川
合計7河川あります。
これらの県境の標高を調べればいいのです。
国土地理院が行なっている2万5000分の1地形図の
地図閲覧サービスで県境を流れる河川の等高線を追っていきます。
まずは太平洋グループから。
木曽川は、旧山口村が岐阜県に編入されたため、現在は南木曽町・JR中央西線田立駅の西方にあります。
凡そ320m。
このようにして矢作川、天竜川、釜無川を調べてみると、
矢作川の県境が凡そ520m、天竜川が300m、釜無川が700m。
同様に日本海側グループを調べてみます。
千曲川が信濃川に名前が変わる栄村森の標高が250m、関川の信濃町柄山地籍が500m。
6本の河川の中では千曲川が今のところ最も標高が低いです。
そして、最後に姫川…。
小谷村北端では姫川が長野・新潟の県境をなしいるのですが、実はこれに沿って走るJR大糸線がこの区間で3回ほど川を渡るため、長野と新潟を行ったり来たりします。
平岩駅の手前、延長3152mの眞那枝山トンネルを抜け、姫川を渡るといったんは新潟県に入りますが、平岩駅を出てすぐ再び姫川を渡ると長野県に戻ります。
ここの標高が250m。
千曲川とほぼ同じ標高が出ました。
さらに大糸線は姫川の右岸に沿って25‰の急勾配で下っていきますから、県内最低地点がこの一角にあることが想像できます。
やがて、
延長1647mの鎌倉山トンネルを抜けると4たび、姫川を渡り左岸を走ることになりますが、まさにこのトンネルを抜けた瞬間、県内の最低地点を通過することになります。
線路断面図を見ると、ここの標高が記されています。
180m。
実際の川床はこれよりも10mほど低そうなので、最低地点は170mほどでしょうか。
これは東京の郊外、国電区間の終点、高尾駅とほぼ同じ標高です。
ちなみに国道148号線のほうはというと、こちらは湯原トンネルを抜け、蒲原沢を渡った時点で新潟県入りすると長野県内には戻ることはありません。
また、県境自体もこれより北には向かっていないので、まさにこの地点が唯一無二の県内最低地点と言えそうです。
大糸線の松本起点のキロポストは88.5キロ。
終着の日本海沿岸の街、糸魚川まではここから16.9Km、25分ほどです。
信州は海岸線から離れているというイメージがありますが、場所によっては案外、海は近いのですね〜。
あたりは姫川がつくり出すV字峡の真っただ中、今、ちょうど紅葉が見頃を迎えています。
写真は上から
●穂高連峰(画面の中央が奥穂高岳)
●県内最低地点をゆく大糸線(平岩〜小滝)、トンネルを抜けたその瞬間、県内最低地点を通過
(NikonD200+28〜75mm、07.11.17撮影)
*ちなみに鉄道での県内最高所は小海線の清里〜野辺山間で標高は1375m。
これはJR線においては県内ばかりでなく日本の最高点となります。