この銭湯には自宅に内風呂が無かった頃はもちろんですが、出来てからもよく家族や友達と入りにきたものでした。
自宅からは公園を斜めに突きった先の細い路地を通り抜けた先にあって、子供の足で歩くと5、6分ほどだったかな!?
家の近くからも煙突が見えていて、午後3時を過ぎると煙が出て、開店を知ったのでした。
小平を離れた後も、この界隈を訪ねてはいるものの、実際、入る機会は皆無でしたから、ランニングの汗を流すという点においても、とても有意義に感じられました。
小学校前の通りから奥まったところに入口があります。
瓦屋根の破風建築の外観はとても重厚で、子供の頃のままの姿を留めています。
ただ、細い路地のあった都営住宅側からの入口は塞がれているのが、数少ない変った点と言えるかもしれません。
男湯は向かって右側、女湯はその反対側、この位置関係は変らずでした。
入口を入ってまず目に飛び込んできたのは木札の鍵が備わった下駄箱。
これも変っていない…。
扉を開けると番台があり、おばちゃんに入浴料450円を払うと同時に写真撮影の了解を求めたら快く承諾していただきました。
ありがとうございます!
脱衣場も昔のまま。
やや高い天井には扇風機の大きな羽根がつり下がり、男女を仕切る柱には柱時計が置かれています。
天井と壁との間に施された緩いRや曇りガラスの棧に、なんともレトロな渋い雰囲気を醸し出していました。
いよいよ浴室へ入ります。
壁の絵は、果たして昔からのものかは分かりませんが、でも、確かに海と青松と舟が描かれていたのを記憶しています。
向かって右側のやや大きな浴槽がぬる湯で左側の少し小さめの浴槽が熱あつ湯だったような気がしましたが、今はどちらも同じ泉温でした。
違うのは右側がジェット噴流、左側が泡風呂で水深が深いという点でした。
浴槽は昔、もっと広いと感じていたのですが、いかんせん身体自体が子供サイズだったので、そのように思えたのでしょう。
30年以上の時を経て入る小平浴場の湯は、いつも入る信州の立ち寄り湯とはまたひと味違った良さがありました。
ただ単に懐かしさだけでない、ほかのもの。
たぶん、二十歳でふるさとを離れ、今までまがりなりにも人生を歩み、そして、再びふるさとに接した時にわき上がる感慨とでも言うのでしょうか。
鮭が産卵のため生まれた川へ戻ることにも似ているのかな!?
そんな気持ちを抱きながら、空っ風が吹き渡る屋外に出て、駅までの道をとぼとぼ歩き出しました。
*小平浴場にて
Lumix
2009.1.17撮影